小説家は眠らない

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咲夜さんが何故可愛いのか、ちょっと本気出して考えてみた

久し振りにブログ書きます。そういえばこんなんありましたね。

 

皆様は十六夜咲夜という少女を知っているでしょうか?

 

東方Projectというゲームに登場するメイドさんです。私はこの女の子が昔から大好きで、かれこれ10年以上彼女のファンです。

 

そんな咲夜さんが何故可愛いのか。ちょっと真剣に考えてみました。

相変わらず馬鹿なことばっかりやってますが、見て頂けると幸いです。

 

 

十六夜咲夜は何故可愛いのか

 

00.はじめに
十六夜咲夜とは2002年8月のコミックマーケットにて完成版が配布された、「東方紅魔郷 ~the Embodiment of Scarlet Devil.(以下、一般的に呼称される紅魔郷で統一する)」に登場したキャラクターである。初出である紅魔郷では5面ボスを務めた。時間を操る程度の能力を有しており、紅魔館のメイド長として家事の一切を取り仕切る立場にある。


本稿では十六夜咲夜という女性が何故可愛いのかについて、主観的、或いは客観的な視点を用いて検証する。また、本稿においては上海アリス幻樂団の設定に準じて論じるため、所謂二次創作と呼ばれる設定や、ファンによる考察を考慮に入れないことを明記しておく。

 

 

01.十六夜咲夜Windows版での人物像
十六夜咲夜、ここでは三人称である彼女を使用するが、彼女は上記で述べた通り紅魔館のメイド長であり、紅魔郷では以下のように記される。

 

○紅魔館のメイド
  十六夜 咲夜(いざよい・さくや)

  能力:時間を操る程度の能力


  5面ボスです。メイドで、10~20年程人間をやっています。

  彼女はその能力により人間から煙たがられてしまいます。すでに普通の人間と仲良くやっていくのをあきらめています。
  これといった名誉欲や支配欲などはなく、飯さえ食えればそれでいいと思い、紅魔館でメイドをやっています。

  紅魔館では清掃係兼メイド長を担当していて、常に時間を止める能力を活かして仕事をしています。
  (時間止めて掃除をすると埃が舞わないとか)

  この家の主人がアレなので、実質、メイドというか子守り役というか、この家を仕切っています。

参照:上海アリス通信 vol.1

 

 

 

紅魔郷では紅魔館の主、レミリア・スカーレットに絶対的な忠誠心を誓っているわけではない。しかし、以下の画像から使用人としての務めを全うすべく、主の危険を回避するために動いていることが見て取れる。とはいえ紅魔郷での行動を見る限り、忠誠心から動いているわけではなく、仕事をこなすために侵入者を排除しようという側面が強い。後述する主への絶対的な忠誠心は初登場時段階では薄いと言える。

 

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紅魔郷での服装は、青と白の二つの色からなる半袖のメイド服である。頭には白いカチューシャを被り、首に緑のリボンを回している。彼女の職業はメイドであるため、メイド服を着用しているのは至極当然だろう。手には三本ナイフを所持しており、それらは武器として使用される。メイド本来の仕事として戦闘行為は含まれないはずだが、幻想郷、加えて吸血鬼のもとで働くならば、戦う能力を求められているのはおかしなことではない。彼女の能力を考慮するに、戦闘力を買われて紅魔館に雇われている可能性は十分ある。

 

紅魔郷時点での彼女の瞳は赤だが、後の作品ではこの限りではない。彼女の瞳の色が変わっていることについては言及されていないため、十六夜咲夜の謎の一つとされる。

 

 

次作「東方妖々夢 ~ Perfect Cherry Blossom. (以下、一般的に呼称される妖々夢で統一する)」では瞳が青系統に変わっており、紅魔郷と比較して柔らかい表情になっている。

 

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服装も若干変化し、半袖であったメイド服が冬仕様になっており、首に巻いているリボンが褐色のマフラーと変わっている。これは妖々夢が冬を舞台にしているため、自然な着用だろう。今作ではナイフを手にしていない。また、妖々夢の彼女の設定は以下のように記される。

 

○紅魔館のメイド
  十六夜 咲夜(いざよい さくや)

  主に時間を操る程度の能力を持つ。

  幻想郷にある湖のほとりに、その紅いお屋敷はある。そこで働くメイドである。給金は無い。

  この館で掃除したり、指示したり、料理したり、お嬢様の世話したりで、普通に忙しい。

  館は無駄に広く、それでいて単調な色調のため、全体像はなかなか掴めない。迷い込んだ招かざるお客様が何処かに落ちていても、分から
  ない。先に誰かに発見されて消されていても、分からない。

  紅い建物は、緑の多い幻想郷に在っても何故か違和感を感じられない。
  あたかもそこに在るのが当たり前かの様に、建っていた。

  咲夜も、ここに暮らしていると時間が停止しているかのように感じるのだった。もちろん、咲夜が時を止めているわけではない。

参照:○東方妖々夢 ~ Perfect Cherry Blossom.


 キャラ設定 他

 

 


妖々夢の設定ではメイド長の記載がないが、仕事の様子から察するに、メイド長として屋敷の仕事をこなしている。また、紅魔郷ではやや高圧的な印象があったが、自機である妖々夢では普段の彼女がどのような性格であるのかを考察できる。レティ・ホワイトロックを撃破した際に発する、

 

「黒幕、弱いなぁ」

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という言葉や、アリス・マーガトロイドに自分の心配をするように言われ、

 

「服の替えを3着しか持ってこなかったの 自分」

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という言葉から、彼女がマイペースでやや天然な人間であることが伺える。彼女の元々の性格はこのように少々独特なきらいがある。だが幻想郷では彼女のような思考を持つ者は少なくなく、彼女のみが変わり者とは言い難い。

 

紅魔郷では自身の仕事のために戦っている印象が強かったが、妖々夢では彼女の好戦的な側面が押し出されている場面がある。魂魄妖夢と戦う際にはそれが顕著であり、姿の見えない魂魄妖夢に対して

 

「出てきな」

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と放ったり、口調が刺々しくなる。彼女が戦闘行為を望んでいるのか、異変への苛立ちから言葉が荒々しくなるのかは不明だが、少女らしい言葉遣いと大きな差があるだろう。

 

 

続く作品「東方萃夢想 ~ Immaterial and Missing Power.(以下、一般的に呼称される萃夢想で統一する)」ではキャラクターグラフィックを従来のZUN氏ではなく、黄昏フロンティアのalphes氏が担当している。そのため、絵柄に大幅な変化が伴う。本稿では原作者であるZUN氏の絵柄を尊重し、萃夢想での十六夜咲夜の容姿については言及しない。
萃夢想での設定は以下の通りである。

 

○紅魔館のメイド
  十六夜咲夜(いざよいさくや)

  種族:人間
  住処:紅魔館
  能力:時を操る程度の能力

   紅魔館の住み込みで働くメイドさん。炊事、掃除、洗濯、子守にナイフ投げと、メイドがやりそうな事は全て完璧にこなす。メイド長。

   性格は、瀟洒で完璧そうに見えるが、たまに抜けている所も見せる。
  仕事が完璧で速いのは、時間を止めて仕事をしているいるからだと思うが……。

  体術も得意とする。むしろ弾幕のような怪しげな術よりも得意な位。
  弾幕にも投げナイフを使うのはその為である。それにタネの無い手品が好きで、戦闘にも積極的に取り入れる。そういう所が抜けている所の様な気がしてならないが。

参照:上海アリス通信 vol.5

 

 

 

萃夢想の設定によると、彼女は体術を得意としている。また、タネの無い手品が好きだと挙げられており、戦闘に積極的に取り入れているとある。メイドとしての働きぶりも申し分なく、完璧にこなすと評される。上記を裏付けるものとして、萃夢想では伊吹萃香との会話にて以下のような言葉を残していた。

 

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また、萃夢想のエンディングでパチュリー・ノーレッジの蔵書について、さほど理解していないことが判明した。

 

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妖々夢にて垣間見えた彼女の抜けている所は、萃夢想で言及されている通りであった。この事実から彼女は仕事とそれ以外では性格が少々異なると言える。

 

 

東方永夜抄 ~ Imperishable Night. (以下、一般的に呼称される永夜抄で統一する)」では自身の主、レミリア・スカーレットと共に参戦。服装を紅魔郷に近いメイド服に戻していた。ただ、紅魔郷では首にリボンを巻いていたが、永夜抄では深緑色のネクタイを身に着けている。


主と行動を共にしているためか、物腰は柔らかくなっている。依然好戦的ではあるものの、レミリア・スカーレットを嗜め、間違いを指摘する場面があった。
永夜抄では以下の設定がある。

 

○紅魔館のメイド
  十六夜 咲夜(いざよい さくや)
  Sakuya Izayoi

  種族:人間
  能力:時間を操る程度の能力

  幻想郷にある湖のほとりに、その紅いお屋敷はある。そこで働くメイドである。

  メイドをしていると、こんな辺鄙な山奥でも衣食住に困らず快適である。彼女は人間だが、悪魔達と一緒にいる為人間からも妖怪からも余
り良い目で見られない。でも一部の人間達はそんなことを一切気にし
ないで接してくれるし、何より食う寝る処に住む処に困らない。これ
ほど快適な暮らしは他に考えられなかった。

参照:○東方永夜抄 ~ Imperishable Night

 キャラ紹介とネタバレ

 

 

紅魔郷の設定では人間と仲良くなっていくことを諦めている旨の記載があったが、永夜抄では一部の人間とは接点があることが記されている。また、レミリア・スカーレットとの会話にて、不老不死の誘いを断っている。彼女のスタンスは生涯人間でいることである。

 

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主との関係は良好なようで、レミリア・スカーレットに対して、くだけた言葉を発することがある。

 

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今作では十六夜咲夜レミリア・スカーレットに強い忠誠心を抱いていることが多々描写され、軽口を叩きつつも、主を想う心は強いと考えられる。

 

 

続く「 東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View. (以下、一般的に呼称される花映塚で統一する)」での服装は永夜抄と変わりがない。設定としては以下のように記載される。

 

○完全で瀟洒なメイド
  十六夜 咲夜(いざよい さくや)
  Izayoi Sakuya

  種族:人間
  能力:時間を操る程度の能力


   幻想郷にある湖のほとりに、その紅いお屋敷はある。そこで働くメイドである。

   今回は、一応異変と言うことで様子を見に出てきた物の、特に危険は無いと感じていた。それは紅魔館の者の様子も、特に慌てた物では
無かったからでもある。

参照:○東方花映塚 ~ Phantasmagoria of Flower View.

 キャラ紹介とネタバレ

 

 

花映塚では目新しい設定や趣味嗜好等はなかったものの、四季映姫・ヤマザナドゥに厭世的であることを指摘される。以降の作品や書籍では人里に出歩いたり、性格が丸くなったところを見ると、思うところはあったのだろうと考えられる。

 

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8年ぶりに自機復活となった「東方輝針城 ~ Double Dealing Character. (以下、一般的に呼称される輝針城で統一する)」では過去作と比べて大きなデザインの変更が見受けられた。

 

過去作のメイド服デザインを踏襲しつつ、全体的にシャープな絵柄となり、右手に短剣を握っている。今までには見られなかったタイツを着用しており、それまでの少女らしい容姿から一転して、大人びた女性を連想させる容姿を獲得した。

 

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輝針城での設定は以下のように記される。

 

○悪魔のメイド
  十六夜 咲夜(いざよい さくや)
  Izayoi Sakuya

  種族:人間
  能力:時を操る程度の能力

  紅魔館にすむ、人間のメイド長。

  最近、勝手に敵に向かっていく短剣を手に入れた。
  自分で投げるよりもずっと簡単で、気持ちの良い物だった。

  そんな時、紅魔館の近くの霧の湖で妖怪が暴れているという
  噂が立った。
  咲夜は短剣を試すべく戦いに出る。

参照:○東方輝針城 ~ Double Dealing Character

 キャラ設定とかあとがきとか

 

 

設定に記されている通り、彼女は好戦的な性格をしている。刃物が好きなようで、ナイフから短剣に乗り換えることに抵抗はない。戦闘以外は温和な性格であり、理解も早く、常に冷静である。

以上がWindows版での大まかな十六夜咲夜の人物像である。

 


02.十六夜咲夜の書籍での人物像
Windows版では不明だった情報が書籍にて明かされるというのは「東方Project」では非常に多い。十六夜咲夜も例に漏れず、書籍で明らかになった事実が多数存在する。

 

東方香霖堂 ~ Curiosities of Lotus Asia.(以下、一般的に呼称される東方香霖堂で統一する)」や「東方文花帖 ~ Bohemian Archive in Japanese Red.(以下、一般的に呼称される文花帖で統一する)」で明かされた事実として、彼女は手癖が悪いということが挙げられる。東方香霖堂では灯りが消えた香霖堂を訪れ、店主の森近霖之助

 

「留守で灯りを消していた場合も、勝手に上がって物色するつもりだったのだろうか。そう考えるとおちおち家も空けられない。」

参照:東方香霖堂 ~ Curiosities of Lotus Asia. 第十七話 月と河童

 

 

 

と評されている。また、文花帖にて彼女が霧雨魔理沙八卦炉を盗もうとしたことが記されている。射命丸文は個人の推察として記録を残していた。

 

犯人も、普段は幻想郷の人間の中ではしっかりしていると評判のメイドだったので、この日の異常さが際だって見えた。ただ、犯人は竹の花や青いダイヤモンドなど珍品を好んで集める癖があると言うことも知られており、今回の事件もその癖が変な方向に出てしまったものと思われる。

参照:東方文花帖 ~ Bohemian Archive in Japanese Red. Page 20 第百十九季 葉月の三 夜を駆ける珍品ハンター現る

 

 

これらのことから日常的に彼女が他者の物に手を付けていると推測できる。しかし、幻想郷にて盗みを働くのは彼女問わず多い。そのため、ある種幻想郷の文化に染まっているとも考えられる。

 

 

東方求聞史紀 ~ Perfect Memento in Strict Sense.(以下、一般的に呼称される求聞史紀で統一する)」では彼女が幻想郷の外の人間であると示唆されている。

 

紅魔館で働き始める以前の彼女の姿を見たことがある者は居ない。
さらに、紅魔館に訪れる里の人間に対しても冷たく、常に妖怪の味方である。
その為、幻想郷の人間ではなく、外の世界かもっと別の世界の人間だと思われる。

参照:東方求聞史紀 ~ Perfect Memento in Strict Sense. Page 121 紅魔館のメイド 十六夜 咲夜

 

 

また、求聞史紀では彼女の名が本名ではないことについて触れ、推察を行っている。

 

さらに、今の名前は吸血鬼に付けられた名前で本名ではないという。
一説によると、彼女は元々外の世界か別の世界の吸血鬼ハンターで、吸血鬼を追って紅魔館に辿り着き、仕留めようとして返り討ちに遭ったのではないかと言われている。
そう考えられる理由は、彼女の使う銀のナイフは吸血鬼を仕留める為のナイフである事と、紅魔館の吸血鬼が持つ能力である。

参照:東方求聞史紀 ~ Perfect Memento in Strict Sense. Page 122 紅魔館のメイド 十六夜 咲夜

 

 

しかしこの書籍は稗田阿求が記したという体裁で書かれたものであり、稗田阿礼の推察の域は出ない。従って、事実とかけ離れている可能性は高い。このほかに求聞史紀には十六夜咲夜の特技は投げナイフであることも記されている。

 

 

東方茨歌仙 ~ Wild and Horned Hermit.(以下、一般的に呼称される茨歌仙で統一する)」では彼女の能力の詳細が描かれている。

 

それにね
時間を止めるというのは
超高速で動くことに過ぎないのよ
無質量でね
他人の時間の進みを止めるような器用なことは出来ないわ

参照:東方茨歌仙 ~ Wild and Horned Hermit. 第7巻 Page 128 第三十五話「茨華仙の信じる道」

 

 

また「The Grimoire of Marisa」では彼女のスペルカードについて記されている。

 

空虚「インフレーションスクウェア
使用者 十六夜咲夜
ナイフ密度 ★★★★★★★
時間を止めてナイフをやたらめったら配置するスペルカード。
私から見たら突然無茶苦茶な数のナイフに囲まれる訳だが。
時間を止めている間にこれだけのナイフを設置しているところを想像すると面白い。
とても避けられるレベルじゃない位高密度。完全に捕獲モードである。
しかし……時間を止めてナイフを設置している姿を一度見てみたい物だ。

参照:The Grimoire of Marisa Page 147

 

 

このように時を止める能力であっても、労力を要することが多い。強力と思わしき能力なのは間違いないが、制限があることは確かである。

 

Windows版では人間に冷たいと評されろ程厭世的であったが、書籍の多くでは人付き合いは悪くなく、彼女なりに折り合いをつけているのだろう。特に冷たい印象を受ける場面はないと言える。

 


03.十六夜咲夜は何故可愛いのか
以上を踏まえ、ここでは十六夜咲夜が何故可愛いのかについて推測していく。


彼女の職業はメイドである。今日の日本においてメイドという職種は一定の人気を博し、メイド萌えという言葉は一般に浸透している。2000年代に入り、メイド喫茶という店舗形態が出現したおかげでオタクと呼ばれる人々以外(ここではアニメやゲーム、漫画、ライトノベルを熱狂的に好まない者達を指す)にも受け入れられつつある。十六夜咲夜もメイド萌えの対象として捉えられている。

 

そういったメイド萌えだが、日本においてメイドという存在に焦点を当て、ヒロインに昇格させた歴史は90年代に遡る。無論、それ以前にもメイドやメイドの姿をしたキャラクター達は存在したが、端役に過ぎず、メインヒロインとして扱った作品は一般的に認知されていなかった。

 

例えば『はいからさんが通る』(『週刊少女フレンド』(講談社)に1975年7号から1977年10号まで連載された)にメイド服は登場したが、あくまでコスチュームの一環である。

 

 

一般的にメイド萌えが始まったとされるのは1996年発売の『雛鳥の囀』(BLACK PACKAGE)からである。

 

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これ以前に1993年発売の『禁断の血族』(シーズウェア)があるが、禁断の血族ではヒロインの立場がメイドであっただけであり、メイドそのものが推されていたわけではなかった。現在誰もがイメージするヴィクトリア朝の制服を着た若いメイドは、雛鳥の囀から生まれたといえる。

 

十六夜咲夜もこれ以降の作品のキャラクターであり、消費者が想像しやすいメイドの立場である。メイド萌えというジャンルが確立した後のキャラクターとして、彼女は消費者が受け入れられやすい人物であった。

 

また、十六夜咲夜の服装の配色にも注目したい。

 

彼女が着用するメイド服は青と白の二色で構成されている。心理学的に青のイメージは冷静、品性がある、ストイックといったものがある。そして白のイメージとしては潔癖、世間離れした所がある傾向が強い。加えて髪の色の銀にもクールな印象を与える要素が含まれる。

 

これら全てを統合すると、十六夜咲夜という少女は冷静かつ品のある、世間離れした少女である。世間的に考えられている彼女のイメージと一致していることから、キャラクター性としては成功している部類だろう。色彩心理によって自身の印象を強めているため、自ずと好印象を受ける。

 

容姿によって人を惹きつける要素を盛り込んでいる彼女だが、「ゲインロス効果」によって印象をより良く見せている。

 

「ゲインロス効果」とは、最初にマイナスの印象を与え、その後にプラスの印象を与えた方が、より良い好印象を抱かせることができることを指す。十六夜咲夜を対象として考えると、次の事柄が挙げられる。

 

紅魔郷では仕事を果たすべく襲いかかってくる、冷たいメイドという印象が強かった。設定として普通の人間と仲良くなるのを諦めていると明記されており、彼女に人間らしい要素は少ないのではないかという認識が強い。しかし次作の妖々夢では天然な部分が露見し、続く作品では茶目っ気の強い性格が明らかとなった。一般的に使用される言葉を用いるならば、これはギャップ萌えの一種であり、いかにも完璧な人物が実はいくらかの欠点があった、という現象である。彼女の魅力、ひいては可愛らしさはここに秘められており、男性を虜にする要素が非常に多く含まれている。

 

また、彼女の強さも十六夜咲夜という人物を構成する上で欠かせない要素である。

 

神話を見ても天照大御神は女性であり、日本人という種族は大きな力を持つ女性を求めていた。女性は生命の源であり、強くあって欲しいという願いがあったのだろう。

 

十六夜咲夜の強さは折り紙付きである。時を操り、体術を駆使し、ナイフを使用する。紅魔郷全般に言えることだが、彼女はジョジョの奇妙な冒険に登場させるDIOを連想させ、ナイフ投げはこの漫画からインスパイアされたものと推測される。人気漫画にインスパイアされ生まれた少女は、美しく強い人物で、オタクの心を掴んで離さなかった。加えて好戦的であるため、戦闘に臨む姿勢も優れている。

 

以上の要素から、十六夜咲夜という少女は女性としての魅力を全て内包した、完璧な女性であると結論付ける。

 

 

04.本研究のまとめ
十六夜咲夜が何故可愛いのかについて、Windows版、書籍を調査することで、一応の結論を得られた。しかし調査は不十分であり、例えば、緋想天や非想天則、三月精の情報を含めた調査となっていない。従って、これらが正しい結果であるとは言い難い。主観が大いに含まれており、不必要な情報が除かれている可能性も否定出来ないだろう。


この論が不特定多数の目に触れ、もっと正確で、完璧な研究成果を生み出してくれるならば、これ以上の幸福はない。十六夜咲夜が何故可愛いのかについて研究が増えることを切に願うばかりである。