小説家は眠らない

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中世風ファンタジーとはいうけれど、何故中世風が好まれるようになったのか

インフルエンザでくたばっておりましたが、最近復活しました。皆様も風邪やインフルエンザにはお気をつけください。

 

で、今回の記事。小説家になろうにてなんちゃってファンタジーを書き始めて、ふと気になりました。

 

日本のファンタジー作品の舞台は中世風の場所が多いけれど、そもそも何故中世風の世界観が好まれているのか。

 

例の如く今回は私の個人的な意見ですので、鵜呑みにしないで頂きたいのですが、それを踏まえて、今回の記事を読んでもらえると幸いです。

 

まあ、どうせドラクエが原因なんだろうけど。

 

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そもそも中世風ファンタジーって別に中世じゃないよね、というツッコミは野暮なのでここでは触れません。Twitterでもちょっと書きましたし。今回の議題として、ファンタジーと聞くと何故中世風ファンタジーを思い浮かべやすいのか、ということに対して掘り下げていきたいと思います。

 

そもそもファンタジーの定義として、次のような事柄が挙げられます。

ファンタジーの定義は、曖昧であるが漠然とした傾向として、作品の魔法などの空想的な語彙(要素)が(現実的にはありえなくとも)内部(著者、編集者のみならず善意の理解者を念頭に置くことができる)的には矛盾なく一貫性を持った設定として導入されており、そこでは神話や伝承などから得られた着想が一貫した主題となっていることが挙げられる。 そのような構造の中で、ファンタジー的な要素はどのような位置にあってもかまわない。隠されていても、表面上は普通の世界設定の中に漏れ出す形でも、ファンタジー的な世界に人物を引き込む形でも、そのような要素が世界の一部となっているファンタジー世界の中で全てが起こる形でもありうる

Wikipedia出典

 

つまり作品内にて想定したルールが、たとえ現実的ではなくとも、一貫性を持っていたとしたならば、それはファンタジーとして扱っても良い、ということでしょうか。魔法や錬金術などが分かりやすい例ですね。空想の産物ではありますが、そこに何かしらの説得力があるならばルールとして適応します。そこに受け手が疑問を挟む余地は基本的にないはずです。

 

また、Wikipediaでは文学史の中にファンタジーの起源を求めると、古代、中世の頃に記された神話や伝説、英雄物語に辿り着くとありますが、これは出典と検証がないので怪しいところですね。神話とはその民族の神の活躍(あるいは悲劇)を描いたものであり、そこには民族の教訓、倫理観、死生観が込められています。神話とは、そして英雄譚とは、当時の人間にとってその時代の歴史や政治を描いた事実であり、ひいては生活と民族の思考様式を表しています。つまり、空想から生まれうるファンタジーは神話から着想を得ることはあっても、源流を神話とすることは難しいのではないでしょうか。

 

まあベオウルフとか下手なファンタジーよりもよっぽどファンタジーしてますが……。

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従って、現在のファンタジーの元祖を辿るならば、Wikipediaに最初期のファンタジーとして挙げられている「水の子 陸の子のためのおとぎばなし」「不思議の国のアリス」あたりが有力ではないでしょうか。「水の 陸の子のためのおとぎばなし」は私は詳しく知りませんが。今回Wikipediaを覗いて初めて知りました。いろんな作品があるんだなあ……。

 

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そうした作品は児童文学として扱われる一方、次第に大人にも読まれるようになり、SFとも相互に影響しながら発展していきます。この辺りが結構面倒くさいんですよね。SFなんだか、ファンタジーなんだか、冒険小説なんだか、定義が曖昧な作品がポンポン出てきます。近代ファンタジーという言葉で全部片付けるには難しいほどごちゃごちゃしています。

 

そんな中、今後のファンタジーを左右する決定的な作品が登場します。左右するというか、これ以降のファンタジーの方向性を決定づけた、と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 

そう。タイトルくらいは誰もが耳にしたことはあるJ.R.R.トールキン著「指輪物語」ですね。

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その世界観、歴史、細かな心理描写や生活スタイルに風俗と、全てにおいて緻密に練られている傑作です。自作言語を使いたいがために作品を書いたという、ちょっと変な人の作品ですが、後のファンタジーに多大な影響をもたらしたのは間違いありません。エルフとか。ホビットとか。

 

現在多くの人が想像する、魔法やモンスターが現れる世界観、というのは、指輪物語の影響です。それくらいこの作品の影響力は凄まじいと言えるでしょう。

 

とはいえこの指輪物語が根本的に日本における中世風ファンタジーの走りかと問われるならば、微妙なところ。現在のファンタジーの始祖と言ってもよい作品ではありますが、しかし、中世風ファンタジーの流行を決定づけた、と言うには早計だというもの。

 

欧州や欧米と違い、日本で指輪物語は爆発的な広がりを見せてはいない気がします。あくまでそれらと比べると、なので、マイナーな作品と言っているわけではありません。しかしファンタジーの火付け役としては日本では指輪物語の立場は弱い気もします。

 

ですが、何度も言うように指輪物語はファンタジーに多大な影響をもたらしました。それは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」も例外ではありません。

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ダンジョンズ&ドラゴンズは世界で初めてのRPGであり、これもまた、その後のファンタジーに影響を与えています。pixiv百科事典によると、ダンジョンズ&ドラゴンズはこのように説明されています。

 

中世ヨーロッパを舞台にしたウォーシミュレーションゲーム「チェインメイル」を元にして作られた、世界初のRPG
アメリカ人のゲームデザイナー、ゲイリー・ガイギャックス(Ernest Gary Gygax)とデイブ・アーンソン(David Lance Arneson)の2人によって1974年に発表。ゲイリーが設立したTSR社(Tactical Studies Rules, Inc.)は、1997年にウィザーズ・オブ・ザ・コースト社(Wizards of the Coast)に買収されるまで多くのシリースを発表し、その後のTRPG及びRPGに大きな影響を与え続けている。

pixiv百科事典出典

 

ここにきてやっと中世ヨーロッパという言葉が出てきました。そうです。ダンジョンズ&ドラゴンズは中世ヨーロッパを下敷きにしています。

 

私見ですが、現在の中世風ファンタジーの元祖は、このダンジョンズ&ドラゴンズにあるのではないか、と考えます。世界初のRPGは現代のファンタジーに通じるところも多く、ファンタジーによく登場するエルフやオークはこのルールブックを踏襲したものが多いのです。

 

即ち、指輪物語がファンタジーの骨格を作り、ダンジョンズ&ドラゴンズがファンタジーの肉付けを行ったのではないか、というのが私の個人的な考えです。

 

やがてファンタジーはコンピュータRPGにも進出してきます。今ではファンタジーというとゲームの中の世界観を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。そして、コンピュータRPGの元祖とも言うべき作品が何なのか。

 

それは「Wizardry」です。

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このWizardryはダンジョンズ&ドラゴンズを個人向けの小さなパソコンで再現することをコンセプトとして生まれました。そのためダンジョンズ&ドラゴンズの影響がモロに出てますね。

 

そしてWizardryは現在のRPGの発展を促した作品と言えます。Wikipediaによると、

1981年、アメリカにおいて発売されたコンピュータ・ロールプレイングゲームである。主観視点で表現される迷宮を探索し、目的の達成とキャラクターの成長を楽しむことがプレイの目的となる。家庭用コンピューターにおけるロールプレイングゲームの、早い試みの一つとして評価される。

Wikipedia出典

 

とのこと。そして肝心なのが、その影響を受けた作品群。日本ではあまりにも有名な作品ですね。

 

現在の家庭用とパソコン用ロールプレイングゲームRPG)の発展に大きく影響したシリーズであり、特に初期作品は「ドラゴンクエストシリーズ」や「ファイナルファンタジーシリーズのような家庭用RPGに重要な影響を与えた。

Wikipedia出典

 

そう。最初に挙げたドラクエです。ここにきてやっと名前が登場しました。長えよ。

 

今の今までうだうだと海外のことばかり書いていましたが、ここからやっと日本に触れます。

 

日本におけるファンタジーは「グイン・サーガ」や指輪物語の翻訳版がありますが、世間的に剣と魔法を扱い、中世風の世界観を舞台にしたファンタジーの知名度を飛躍的に上昇させたのは、やはり「ドラゴンクエスト」です。日本ではこの存在は果てしなく大きい。

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ドラゴンクエストが流行ったことにより、日本でのファンタジーの立場は大きく変わったはずです。それくらいこのゲームは偉大な作品ですね。

 

そしてこのドラクエWizardryからヒントを得て製作されました。Ultimaからも着想を得てますが、とりあえずここではWizardryからのほうに重きを置きましょう。

 

ここまでの流れを整理すると

 

指輪物語の登場により、現代に通じるファンタジーが生まれた。

 

指輪物語の影響から中世ヨーロッパを下敷きにしたRPGダンジョンズ&ドラゴンズが生まれた。

 

・ダンジョンズ&ドラゴンズの影響を受けたコンピュータRPGWizardryが誕生。

 

Wizardryからヒントを得てドラゴンクエストを製作。日本で大ヒット。

 

ということになります。更に日本でファンタジーの紹介役を買って出たのが「ロードス島戦記」でした。

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ダンジョンズ&ドラゴンズのルールに従ってリプレイとして始まったロードス島戦記指輪物語的ファンタジーの紹介を果たしました。もちろん「FINAL FANTASY」「ゼルダの伝説」など、数々の名作ファンタジーゲームがあったことも忘れてはなりません。

 

小説で言えば、「スレイヤーズ」「魔術士オーフェン」も日本のファンタジー世界観を決定づけたのかもしれませんね。

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こういった流れのもと、日本の中世風ファンタジーは作られていったのではないでしょうか。

 

日本のファンタジーの火付け役となったドラゴンクエスト。それの元を辿ると、中世ヨーロッパを下敷きにしたダンジョンズ&ドラゴンズがあった。その流れを組むことで、日本に中世風ファンタジーがやって来た。

 

このような経緯があるため、日本に中世風ファンタジーが浸透したと私は推測します。

 

ああ。疲れた……。